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「幻肢痛」の治療に活用されるVRについて(後編)

2019.08.16

未指定

皆様こんにちは。

本日は後編として、前回に引き続き「幻肢痛」、さらに「鏡療法」、VRを活用した「VR療法」について、住谷先生のお話をします。


この「幻肢痛」の「痛み」の性質は‘刃物で裂かれるような、電気が走るような、焼けつくような’表在痛と言われる「皮膚感覚の痛み」と、‘痙攣するような、ねじれるような、こむら返りするような’「深部痛」と言われる「筋肉や関節の痛み」の2つに大別できるそうで、この「深部痛」においては、「鏡療法」や原理が同じ「VR療法」が有効だそうですが、皮膚に運動指令が関与していないことを考えると、両者とも「表在痛」には効果が見られないようです(図5)。

上肢に「幻肢痛」を有する患者さんでは、前編に記載した図1のように体の地図においては上肢の領域の縮小が見られ、隣接する口や顔面が拡大します。

幻肢と同側の顔を触れられると幻肢に触れられていると感じる患者さんが多くいらっしゃるようで、VRにて、同様のタスクを行い、クリアした時に「幻肢痛」がある側、例えば、患肢が右側であれば、顔の右側に軽い振動を与えてみたところ、鎮痛効果が得られたようです。

VR療法を始めるのであれば、脳が四肢を動かす感覚をよく覚えている急性期から行うのが望ましいということだそうですが、20年に及ぶ「幻肢痛」を有する患者さんが半年間の「鏡療法」で改善した事例もあるようですので、長年患っている「幻肢痛」を有する患者さんにVR療法を試してみる価値はあるようです。

大掛かりな装置を連想させるVRですが、3次元CGのエンジニアなどの協力者の下で、すべて市販品の組み合わせによりシステム構築は可能な上、HMDが改良されれば、さらに手軽になるようです。

現在、VR療法は、「幻肢痛」のように視覚を介した運動学習により治療効果が得られる領域に限られるようですが、VR療法が有効な患者さんは確実にいらっしゃいます。

「幻肢痛」はまれに「脳梗塞」でも発症するそうで、物をつかむ時、手は対象物に対して、素早く近づき、微調整を行いながら行動するようですが、麻痺が残ると微調整に時間がかかり、手ブレも大きくなるようです。

通常のリハビリを行ったものの一定以上の効果が得られなかった「脳梗塞」の患者さんに「VR療法」を行ったところ、手ブレが小さくなり、微調整の時間も短くなり、患肢の麻痺が著しく改善したそうです。

ちなみに、疼痛治療は患者さんの満足度が低いと一般的に言われているそうですが、「VR療法」は高いと言われているだけではなく、一度、経験した患者さんのほとんどが再度、受療したいという結果が出ているそうです。

今後は「幻肢痛」だけではなく、VRを活用した治療法が普及することに期待したいところです


本日は後編としてVRを活用した「幻肢痛」の治療法について、住谷先生の貴重なお話をさせて頂きました。大変、勉強になりました。




 


「幻肢痛」の治療に活用されるVRについて(後編)