ブログ

Blog

歯科矯正用アンカースクリューの利点と併発症について

2026.02.03

歯科
皆様、こんにちは。本日は、前回に引き続き歯科矯正用アンカースクリューについて「歯科矯正用アンカースクリューの利点と併発症について」というテーマでお話しします。
マルチブラケット装置による第一小臼歯の抜歯症例で、臼歯部を固定源とした犬歯の遠心移動、つまり犬歯を大臼歯のある奥歯に向かって移動させる場合、作用反作用の関係で引っ張られる犬歯に対して、犬歯を引っ張る固定源と呼ばれる大臼歯が近心移動、つまり犬歯方向に引きずられてしまう固定の喪失という現象が生じ、従来、その量は通常2mm程度とされています。しかし、近年、歯科矯正用アンカースクリューが薬事承認を受けたこともあり、広く使用されることになり、歯槽骨や顎骨に直接、歯科矯正用アンカースクリューをねじ止めすることで絶対的固定源の確保が可能となりました。この歯科矯正用アンカースクリューを固定源として、犬歯の遠心移動を行う場合、大臼歯には反作用による近心移動、つまり固定の喪失は起こりません。そのため、抜歯・非抜歯の適用や抜歯部位の選択の幅が広がった上、患者様の協力が必要な顎外固定装置が不要となりました。また、歯茎方向に移動させる歯の圧下や歯列全体の遠心移動など、従来の装置では、治療メカニクス上、困難とされる三次元的方向への移動が可能となり、治療メカニクスも単純化できるため、予測性の高い治療が期待できるようになりました。さらに、骨格性Ⅰ級または、軽度~中等度の骨格性開咬症例、つまり上下の顎の前後的位置のズレがない骨格性Ⅰ級や、上の顎の方が前方位、または下の顎が後方位にズレている骨格性Ⅱ級の上顎前突で前歯が開いている開咬の程度が軽度~中等度の症例であれば、外科的矯正治療を回避できるようになりました。しかし、その普及に伴い、様々な偶発症にも注意が必要です。まず、稙立予定部位については、歯型模型、X線写真、パノラマX線写真、デンタルX線写真などによる術前の検査が必要になり、特に歯科矯正用アンカースクリューの植立に必要な骨の厚みの確認や隣接する歯根に障害を与えないよう正確な稙立位置の確認が必要となる場合、X線CTとステントを用い植立位置の確認が必要となります。また、植立部位に関しては、解剖学的構造を把握した上で、骨の厚み、歯根の位置、脈管や神経の存在に注意を払う必要があり、上顎頬側では上顎洞の位置、上顎前歯根尖部では切歯孔や鼻腔の位置、口蓋部では大口蓋動脈、鼻腔の位置を把握し、穿孔や脈管の損傷がないよう、また歯根間の狭窄部では、歯根や歯槽骨を損傷させないように注意する必要があります。次に併発賞についてですが、歯科矯正用アンカースクリューの脱落は10~20%とされています。その理由として、成人に比べ、特に思春期以前の若年者は骨質が柔らかく、骨代謝が活発であったり、口腔衛生状態の不良などが考えられていますが、詳細は不明です。尚、スクリューの動揺や脱離防止には、植立部位の解剖学的構造の精査を十分に行うことが必要となります。次に、歯科矯正用アンカースクリュー破折は稙立時や撤去時に0.15~1.5%生じるとされています。そのため植立時の破折を回避するため、10N・cm以下の力になるように調整する必要があります。さらに、歯科矯正用アンカースクリューの稙立時や撤去時に歯根損傷、歯根膜への障害、神経損傷、鼻腔や上顎洞への穿孔、気腫などが生じる場合があります。その他、歯科矯正用アンカースクリューの周囲にはプラークが沈着しやすく、周囲軟組織の炎症、肥厚、インプラント周囲炎などが生じる場合があり、これらを予防するするために口腔衛生状態を良好に保つことが重要になります。
本日は、「歯科矯正用アンカースクリューの利点と併発症について」というテーマでお話ししました。