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社会性・行動の発達、言語の発達、情動の発達について

2025.04.01

歯科
皆様、こんにちは。
本日は「社会性・行動の発達、言語の発達、情動の発達について」という少し難しいテーマのお話です。
「社会性・行動の発達」ですが、社会性を身に着けた行動は学習によって発達しますが、社会性の発達は身体の発達と違って明確な段階的な区分けが難しい様です。社会性の発達は、母親などの養育者との相互関係から始まり、対人関係が広がるにつれて変化し、次第に個々の生活習慣や文化形態を持つようになります。
「言語の発達」は認識の発達との関わり合いが強いとされていて、言語はコミュニケーションの道具でもありますが、物事を認識するための道具でもあるからです。矯正歯科治療における各種装置や治療の概要などについては言語による説明になりますので、患者さんの年齢や個人の素質に応じた説明を行うためには、言語の発達過程を知る事が重要です。Piagetは人が物事を認識するには、最初に似たようなものをまとめる「同化」の過程が必要であり、その後、同化されたものを分類する「調節」を行う事によって、認識は発達すると考えていて、この分類には言語が必要であり知性はこの「同化」と「調節」の相互作用によって形成されるという事になるそうです。
Piagetによる認識形成の4つの発達段階について解説します。
1.感覚運動期
出生~2歳までの時期は物に対する基本的概念が形成されます。そして言語の基礎となる考えが形成されますが、まだ会話としての言語は形成されません。
2.前使用期
2~7歳の子供は、成人と同じような思考の過程を備え、大人の様に言語を使い始めます。言語として認識できるのは五感で体験できるものに限定され、言葉の意味をそのままに受け取りますので、この時期は擬人化して物を認識する事はできるものの理論的に考える事は困難です。
3.具体的使用期
7~11歳はある程度、理論的な思考を行う事ができ、具体的な物を用いる事で理解を深める事ができます。
4.形式的使用期
11歳以降は理論的な思考も確立し「健康」「病気」「予防治療」などの抽象的な言葉も理解できるようになり、会話も大人と同じような扱いでなされます。
情動とは、喜び、悲しみ、怒り、恐れなど基本情動と不信、恥、罪悪感、劣等感などの高次の社会的感情まで多岐にわたります。その感情に伴う自律神経系の変化や顔の表情、筋肉の緊張などの身体的変化を客観的に捉える事ができ、それらは一時的で急激に起こるものです。
「情動の発達」は人が本質的な社会的危機を首尾よく解決する様に自我の危機を経験し、与えられた課題に対する成功と失敗の結果に大きく関わっているという考えに基づいて、以下の通りEriksonは乳児期から老年期まで8段階に別けた心理社会的発達の精神分析理論を提唱しました。
1.乳児期(誕生~1歳半ごろ)
出生後に両親の密な関わりによって形成される信頼感とそれが得られなかった場合に生じる不信感が芽生えてくる時期です。この形成が発達しないと他人へ預けられる様な状況は受け入れにくくなります。
2.歩行期(1歳半~3歳ごろ)
母親から離れ、自立しようとする行動が生まれ、それができなかった時は恥を感じるようになります。この時期には自ら進んで突発的で挑戦的な行動を取りやすいので、周囲が十分に注意する必要があります。また後半では簡単な選択肢を与え、自分で選ばせる様な事も自律心の形成に必要になってきます。
3.学童前期(3~6歳ごろ)
この時期は行動に積極性を伴う様になります。そのため、子供が簡単に達成できる様な課題を与える事が必要になります。しかし、積極性に行動したにもかかわらず達成できない場合、子供は罪悪感を持ちます。この時期は初めて歯科医院に行く子供が多くなります。最初の達成感が自信に繋がり、その後の通院を容易にさせるのでこの時期は非常に大切です。
4.学童中期(7~11歳ごろ)
学業成績や社会的な技能を伸ばそうと励む時期です。これが達成できると勤勉さを獲得できます。しかし、この結果が否定的であれば劣等感を持つ様になります。矯正歯科治療はこの時期に開始する事が多いため、与えられた装置を一生懸命に付けようとするのでサポートが必要になり抽象的な指導より具体的な指示の方が効果的と言えます。
5.思春期(12~17歳ごろ)
思春期には自我・自分らしさを獲得する過程での葛藤が芽生えます。また、この時期は集団の中の一員である事が彼らにとっては重要であり、この集団の中で自分らしさを発揮できない場合、疎外感・役割の欠落感を抱く様になります。仲間からの評価を非常に気にする時期であるため、必要のない治療を希望してくる事もあるので注意が必要です。
6.成人期
仲間同士の親密感を形成する時期です。特に仕事での目標が同じ方向に向いている事も同士の影響を受けます。しかし、その親密感を形成できない場合、孤立感を深めます。最近、この時期に治療を始める患者さんも増えていて、中には新しい外見を得る事で、孤立感を無くせるという動機で来院される方もいるので、矯正歯科治療に期待する潜在的な心理を確認する必要があります。
7.壮年期
次の世代に対する使命感を抱く様な時期です。子供の矯正歯科治療に熱心な親がその一例です。この様な欲求を形成しない場合、迎合・自己中心的な発達を遂げます。
8.老年期
品位、正直さ、律儀さといった全人的な個性を形成する時期です。その反対の発達が絶望感になります。

本日は少し難しいテーマのお話をしました。

社会性・行動の発達、言語の発達、情動の発達について
【監修者】
  矢澤 貴(やざわ たかし)
【略歴】
  東京都渋谷区生まれ 成城中学・高等学校(東京都新宿区)卒業
  1989年 3月 日本歯科大学 生命歯学部 卒業
  1989年 6月 同大学 臨床研修医 着任
  1990年 3月 同大学 臨床研修医 修了
  1991年 9月 磯貝矯正歯科医院(埼玉県八潮市)勤務
  2016年 1月 藤城矯正歯科(東京都世田谷区)勤務
  2017年12月 半蔵門スマイルライン矯正歯科(東京都千代田区)開院
  2023年 4月 日本歯科大学 生命歯学部附属病院 矯正診療科 臨床講師 着任
【在籍・所属】
  日本歯科大学 生命歯学部 附属病院 矯正診療科
  日本矯正歯科学会 認定医 
  東京矯正歯科学会
  甲北信越矯正歯科学会
  米国矯正歯科学会