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矯正治療でなぜ抜歯が必要なのか

2026.05.29

矯正歯科
皆様こんにちは。本日は「矯正治療でなぜ抜歯が必要なのか」というテーマでその理由と具体例についてお話しします。
1.歯と顎の大きさの関係の不調和があるディスクレパンシー症例の場合:
患者様自身の歯型模型から歯冠幅経(歯幅、トゥースサイズ)に対して、歯列弓(歯列)や歯槽基底(歯列をつくる土台である顎の部分)の幅や長さを計測することで、歯と顎の大きさの不調和の程度が把握できます。方法は歯列弓周長(アベイラブルアーチレングス)を計測し(図1)、歯冠幅径の総和(第二小臼歯から反対側第二小臼歯までの歯幅の総和)を引いた値が著しくマイナス(-)の場合、叢生(デコボコ)を意味するため、抜歯になる可能性が高くなり、プラス(+)の場合、叢生の逆で空隙歯列を意味し、この2つのアーチレングスの計測値の差を不調和の指標として示したものをアーチレングスディスクレパンシーと言います(図2)。
①顎骨に対して歯幅が大きく、顎骨や歯列弓の拡大、歯幅を小さく削っても改善が見込まれない。
②上下顎に矮小歯、巨大歯、トゥースサイズレイシオの異常(上顎の歯冠幅径総和に対する下顎の歯冠幅径総和の比率)など歯の大きさに不調和がある。
③上下顎に先天性欠如、歯の喪失など歯の数に不調和がある。
2.上下顎の顎間関係において前後的な位置不正がある場合:
上下顎の位置関係の不正つまり、骨格性のズレを歯列で補償するために抜歯によるスペースを利用して歯の移動を行う必要があります。側面頭部X線規格写真(セファロ)撮影後、セファロ分析を行い、頭蓋に対する上下顎の前後的な位置やEラインなどの軟組織の位置も含めて、総合的に評価した上で、慎重に抜歯部位を決定します。
抜歯による歯の移動により、上下顎の前後的位置関係の不調和を補償され、上下顎前突、上顎前突、下顎前突の改善を行うことができますが、骨格的なズレが著しい場合、外科的矯正治療を行う場合もある一方で、上下顎の顎間関係は成長発育により変化することがあるため、成長期の場合、成長を利用した矯正治療を行うことにより顎間関係が改善されることもあるため、抜歯適応は慎重に検討する必要があります。抜歯が必要な具体的なケースは以下の通りです。
①上下顎前突
②骨格性上顎前突
上顎歯列の遠心移動量の不足により歯列改善が不可能である。
上顎骨の成長抑制、下顎骨の成長促進という顎骨の成長誘導による歯の被蓋改善が期待できない。
③骨格性反対咬合(下顎前突)
下顎歯列の遠心移動量の不足により歯列改善が不可能である。
上顎骨の成長促進、下顎骨の成長抑制という顎骨の成長誘導による前歯の被蓋改善が期待できない。
3.上下顎骨の顎間関係において垂直的な位置不正がある場合:
①前歯の被蓋関係において咬み合わせが深く、咬み合わせを浅く(咬合挙上)するのために、大臼を遠心移動(体の後方方向)させるスペースが必要な症例。
②前歯の被蓋関係において咬み合わせが浅く、咬み合わせを深くするために、大臼歯を近心移動(体の前方方向)させるスペースが必要な症例。
4.様々な原因で後方臼歯が近心転位(体の前方方向への移動)してしまい、元の位置に遠心移動できず、アベイラブルアーチレングス不足の場合:
①歯の移動に必要な空隙が確保でき、その空隙を有効利用できる歯
③歯の移動に要する動的治療期間を短縮できる歯
④治療目標の達成が容易に実現できる歯
⑤機能的、審美的に影響の少ない歯
⑥形態異常のある歯
⑦重度齲蝕、歯周疾患に罹患している歯
⑧処置歯、補綴歯
本日は矯正治療を行う上で、抜歯が必要とされる場合についてお話ししました。次回は米国の矯正歯科医でありますC.H.Tweedが唱えた「Tweedの抜歯基準」についてお話しします。
矯正治療でなぜ抜歯が必要なのか
矯正治療でなぜ抜歯が必要なのか
矯正治療でなぜ抜歯が必要なのか
【監修者】
  矢澤 貴(やざわ たかし)
【略歴】
  東京都渋谷区生まれ 成城中学・高等学校(東京都新宿区)卒業
  1989年 3月 日本歯科大学 生命歯学部 卒業
  1989年 6月 同大学 臨床研修医 着任
  1990年 3月 同大学 臨床研修医 修了
  1991年 9月 磯貝矯正歯科医院(埼玉県八潮市)勤務
  2016年 1月 藤城矯正歯科(東京都世田谷区)勤務
  2017年12月 半蔵門スマイルライン矯正歯科(東京都千代田区)開院
  2023年 4月 日本歯科大学 生命歯学部附属病院 矯正診療科 臨床講師 着任
【在籍・所属】
  日本歯科大学 生命歯学部 附属病院 矯正診療科
  日本矯正歯科学会 認定医 
  東京矯正歯科学会
  甲北信越矯正歯科学会
  米国矯正歯科学会