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「治せる花粉症」について(後編)

2020.02.29

未指定

皆様こんにちは。

本日の「治せる花粉症」(後編)では、引き続き、日本医科大学耳鼻咽喉科学講座主任教授の大久保公裕先生による主に「舌下免疫療法」についてのお話をします


アレルゲンを皮下注射する「皮下免疫療法」の場合、約8割の患者さんの症状が軽減または無症状に治まり根治が望めるものの、実施する医療機関が少なく通院回数が多いというのが問題でしたが、「舌下免疫療法」の場合、通院回数が少なくて済む上、保険適用になって5年以上が経ち、全国の医療機関・診療科で約4万人の患者さんが受療されています。

医師はeラーニングを受講すれば治療を行うことができ、ダニに対しても「舌下免疫療法」が実施できるようになり、日本でもアレルゲン免疫療法が本格的に行えるような時代になったと言えます。

「舌下免疫療法」は「皮下免疫療法」と同程度の有効性が期待できる上、全身的な副作用も少ない治療法です。

効果には個人差があるようですが、症状が出始める2~3カ月前から治療を開始すれば、そのシーズンから症状の緩和を実感できるようですし、他の薬が不要になる程、劇的に改善されるケースもあるようです。

図3のとおり、これまで治療手段の少なかった重症患者さんに対しても、症状の悪化を食い止める効果が見られるようですが、免疫寛容が完全に成立するまで2年程度、推奨では3年以上かかるとされており、効果の持続性には個人差があるようです。

特に「舌下免疫療法」は、スギ花粉に特異的な反応を示す患者さんに対して有効とされていて、スギ花粉が飛散する2~5月、屋外で症状が出やすい人、鼻だけではなく目にも症状が出る人には効果が期待できるそうです。また、抗ヒスタミン薬などの花粉症治療薬に対する副作用が出やすい人、従来の薬物療法では症状の改善が見られない人に向いているようです。

また、治療対象年齢は12歳以上とされていますが、2018年度から5歳以上引き下げられたそうで、将来、使用する薬の量を減らす意味でも、「舌下免疫療法」の実施における低年齢化は意義が大きいようです。

一方、スギ花粉以外の要因で症状が悪化するようなケースや様々な刺激により症状が出るようなケース、例えば、通年性のアレルギー性鼻炎を持っていてスギ花粉が飛散する時期になると症状が悪化するようなケースでは、期待通りの効果が得られない可能性があります。

その他、反射により暖かい食べ物を食べると鼻水が出るような人は、生理的機序が関わっているため、アレルギー以外の条件の時に鼻水が出る体のシステムを制御するような点鼻薬の併用になるそうです。

「舌下免疫療法」とは、体内にアレルゲンを入れて「体質改善」を図る治療法ですので、患者さん自身の体がどのように変化するかを評価できなければ、この治療法を行う意味がありません。

大久保先生は「あなたの体が変わるのために2年間も継続するのだから、体の変化を楽しみましょう。」と自主的に取り組めるように患者さんに伝えるそうです。

この「舌下免疫療法」はアレルギー持ちの患者さんにその原因物質を持ち帰らせ、毎日、口に入れて頂く治療ですから、なぜ最初の2週間は少しずつ量を増やすのか、急に量を増やすと体にどんな問題が生じるのか、正確に説明した上で、理解して頂くことが、治療が成功するポイントだそうです。

さらに近年、花粉症ワクチンの研究も始まっているそうで、そのメカニズムは、細胞内でスギ花粉の抗原がLAMP(リゾチーム膜たんぱく質)との融合たんぱく質として発現するようにして、免疫系反応をIEを介したアレルギー性反応からIGを介した非アレルギー性反応へと変化させて症状を改善するというものだそうで、数回の投与で根本治療を目指すという次世代型ワクチンと言えるそうです。

この技術は「がん免疫」など幅広い疾患の領域にも応用可能ですが、現在、花粉症治療において、最も先行しているのだそうです。

花粉症対策としては、できるだけ花粉と接触を避けることが基本となりますので、花粉情報を入手し、飛散量が多い日の不要不急の外出は控えた方が良いとされていますが、外出においては、図4のとおり花粉症用の「メガネ」と「マスク」を着用することで、体内に入る花粉の量を大幅に減らすことができるようです。

また、厚生労働省の調査によれば、成人患者のうち19%の人が何らかの民間療法を利用しているそうです。

ヨーグルト、キムチ、納豆、ぬか漬けなど発酵食品には乳酸菌、ビフィズス菌が含まれており、腸内常在細菌との相互作用で腸内環境を整え、免疫力のコントロール作用があるとされていますが、「花粉症に効く」とされる食品の多くは、有効性についての科学的根拠が十分に実証されていないのが現実だそうです。

TVなどで紹介される食品はすぐに飛びついてしまいがちですが、花粉症の人が、ある種の果物や生野菜の摂取により口腔アレルギー症候群を発症する場合があるように、どんな食物もアレルゲンになる可能性があるということを認識しなくてはならないようです。

体は食べたいものでつくられていますから、健康体であれば症状も軽症で済むので、花粉症の患者さんにとって日常の食事は大変重要な要素になるようです。

どんなに体に良いとされる食品でも、毎日、同じものばかり摂取したり、一度に大量に摂取したりすることは避けるべきで、やはり1日15品目以上のバランスの取れた食事を心掛けることが大切だそうです。


今回は大久保先生による「治せる花粉症」について大変、貴重なお話をさせて頂きました。

私自身、「花粉症」が完治できる疾患という認識が持てましたし、国民の4人に1人が罹患していると言われているにもかかわらず、今後も増加の一途をたどるとされる花粉症の患者さんに対して、有効な治療法が承認されることを願っています。

「治せる花粉症」について(後編)
「治せる花粉症」について(後編)