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超音波検査(エコー)の活用法について

2018.09.21

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非侵襲的で分解能が高く、簡便な超音波検査(エコー)はスピーディで的確な診断が可能な画像検査のようですが「メリットが分からない」、「読影が難しい」と言われているようです。

本日は、ご開業されている医師向けの内容で恐縮ではありますが、触診補助としてのエコーの意義について、日本大学病院消化器内科科長 超音波診断センター長 小川眞広先生のお話をします。

 

エコー検査は、特別な準備はなく、プローブ(探触子)を当てれば画像が得られますので、患者さんに苦痛を与えない上、無害の超音波を使用するため、妊婦や乳児、小児にも使用できます。

また、放射線被爆がないため無害であることから、経過観察など繰り返して行える上、その場で画像情報が得られるので、緊急性や重症度の迅速な判断に役立ちます。

また、CTMRIに比べ安価であることが、かえって整度が劣るというイメージが持たれているようですが、エコーの方がCTMRIより時間・空間分解能が高く、リアルタイムで体内の画像を抽出でき、他の画像診断では困難な小さな病変の抽出が可能なのだそうです。

近年、腹部エコーや心エコーの他、利用範囲が広がっていて、例えば整形外科では高周波を用いたプローブの高周波数化で軟組織や関節などの体表に近い組織でも解析度の高い画像が得られるようになったようです。

X線を多用していた捻挫、腰痛、関節痛などの運動器疾患の画像診断でもエコーが活躍していますし、皮膚科では、皮下腫瘤の診断に利用されています。

エコーは触診した時の硬さ、柔らかさ、大きさなどの手の感覚の記憶を画像で記録できることから、「触診補助」として診断のショートカットによる時短に繋がります。

また、得られたエコー画像は患者さんとのコミュニケーションツールにもなります。

例えば、触診で「脂肪腫」というよりも、エコーの画面を見ながら視覚的な要素を加えながら説明をした方が説得力が高まりますし、症状が見られる箇所が標榜している領域外であったとしても、かかりつけ医としてエコー画像を見ながら説明すれば、信頼度も高まるかと思います。

 エコーは固体や液体で伝わりやすく、気体では伝わりにくいという欠点があるため、内部が固体や液体の臓器での描出能は高いが、肺や消化管のような内部に気体を含む臓器の場合、低いとされています。

なお、エコーが敬遠される最大の理由は客観性の低さにあります。CTMRIは記録された画像から、病変を探すのに対して、エコーは検者が検査をしながら、病変を記録するため、検者がスキャンしなかった部位の情報はないですし、スキャンしても検者が指摘できなかった所見は読影に反映されないことから、「エコーは見落としが怖い」と敬遠されがちなのだそうです。

エコー画像はCTMRIとは表示方法が異なり、誰が見ても分かる画像とは限らない上、一画像の抽出範囲が狭いため、客観性の低さが弱点言われていますが、利用法の改善知識の習得でカバーできるということです。

エコーの抽出範囲ではプローブの音響窓の範囲に限られるため、視野が狭く、肝臓は一画面では表示できません。

日本大学病院では肝臓・胆嚢・膵臓・脾臓・腎臓の5臓器と大動脈・下大静脈の撮影については、順番と撮撮影方法を決めた上で、25断面記録を行いエコーの客観性の向上に努めているそうです。

また、腹部エコーを行うにあたり、特に肝臓は下から見上げた画像も撮影するので解剖学的知識が重要ですが、超音波解剖を理解できれば、表示画面から触診のイメージが得られるようになるそうです。

エコー上達のためには、「検査件数を増やすこと」が重要で、まずは、分かりやすい症状から取り組み、徐々にステップアップする心掛けが大事なのだそうです。

エコーは他の画像検査に比べて簡便で無害の検査ですから、まずは操作に慣れるため、日常診療に取り入れる機会を増やしたり、学会で開催されるセミナーに参加することも一法なのだそうです。

やがて経験の蓄積が原因探索や病状評価に活用できるようになるため、重要な触診にエコーを併用することでスピーディで的確な診断に繋がると考えられています。

しかし、超音波診断学という学問が履修科目になっている医学部は少ない上、エコーの教育・指導できる医師が少ないため、医師になってから活用したい、スキルアップしたいという要望にかなう環境が少ないことが一因し、普及率が停滞し、若手の医師ではエコー離れしているのが現状だそうです。

エコーの小型化が進み、2010年、スマホのようなポケットサイズの携帯エコーが発売されました。(図)

手軽に持ち運べることで、その場で画像検査が可能となり、重症度の判定、移送の必要性の有無など在宅診療の場で活躍しているようです。


本日は、学会のハンズオンセミナーを通じて、超高齢化の地域医療を支える開業医の先生方を対象に、検査精度の向上と診断の効率化に寄与するエコーの普及に注力している小川眞広先生の大変、貴重なお話でした。

 

 


超音波検査(エコー)の活用法について