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慢性疼痛について

2018/09/07

皆様こんにちは。多くの方が腰痛、肩こりなどの「痛み」を抱えながらの生活を強いられており、膝痛、腰痛などの「慢性疼痛」で国民の2割以上の方が苦しんでいらっしゃるそうです。

脳科学の進歩で「痛みが慢性化する機構」が明らかになりつつあり、慢性疼痛の概念が変わろうとしています。

本日は、その痛みの機構解明と新規治療法の開発に取り組むため、2014年に創設された東京慈恵会医科大学「痛み脳科学センター」のセンター長でおられる加藤総夫先生の「痛み」についてのお話をします。



「痛み」とは「実際の組織損傷や潜在的な組織損傷に伴う、あるいは損傷に付随して生じる不快な感覚的・情動的体験」のことで、「情動」とは「喜び」「悲しみ」「怒り」「不安」「恐れ」だそうです。

一般的に組織損傷が「原因」で痛みは「結果」と捉えがちで、組織の傷害・炎症などを神経が察知することを「侵害受容」といい、「侵害受容」の刺激で起こる急性疼痛は、障害・炎症が治まれば消失しますが、慢性疼痛は脳内の神経回路の変化により「痛み」の感覚が認識されやすくなっていて傷害・炎症が治まっても消失しないそうです。

脳が「体に不都合なことが起きている」と感じ、それを「不安」「恐れ」「辛い」「苦しい」などと不快感を味わった体験を通じて「痛い」と感じているようです。

「痛み」は身体の有害状況を知らせる警告信号であり、進化の過程で生き延びるために不可欠なメカニズムとして獲得された機能なのですが、医療の立場上、当然、「痛み」は解消・解決するべき問題です。

そんな「痛み」を悪いものとして取り扱うのではなく、必須の生存戦略である痛みが、なぜ慢性の痛みとなって患者さんを苦しめるのか、という視点で捉える必要があるようです。

「痛みの古典的経路」は、末消の侵害受容器、感覚神経、脊髄そして、脳という流れを示す一方で、慢性疼痛は侵害受容器の興奮がなくても生じ、神経回路は脳全体の活動が関与するそうです。

近年、機能的MRIを用いての慢性疼痛患者における誘発痛と自発痛の画像解析が進み、「痛み」の脳機構については、痛みの古典的経路の活性化が弱いこと、侵害受容の入力は極めて広範囲の脳領域を活性化すること、急性疼痛と慢性疼痛は異なる脳領域を活性化すること、慢性疼痛患者での誘発痛は自発痛とは異なる領域を活性化するということが解明されました。

「痛み」で活性化した領域は「意識」「情動」「報酬」などの機能に関与する領域が含まれているようです。脳の中で「痛み」と「情動」の関連性についてですが、原始的な「嗅覚」や「味覚」などは、天敵の認知、毒物の検出などに関与しており「痛覚」と類似した情動回路を活性化します。

「情動」の形成に重要な「偏桃体」は侵害受容によって誘発される「条件恐怖反応」を獲得する中核部位です。

特定の有害性を持たない聴覚や視覚などの感覚刺激(条件刺激)と侵害受容(無条件刺激)を同時に与えると、条件刺激だけで「すくみ行動」や「情動性発声」などの回避行動、心拍出量増大、頻脈や発汗などの自律神経応答、内分泌応答からなる「条件恐怖反応」が獲得され、「脅威の記憶」が形成されたということになります。

「痛み」は自分が不利な状況にあることの信号ですから、社会に対する不満など自身の立場を不利に思う程、痛みを強く感じ残りやすい傾向にあり、虐待や心的外傷後ストレス障害(PTSD)の経験者や自動車事故での外傷では加害者より被害者の方が慢性疼痛は多い傾向になるようです。

個体にとって最優先されるのは「生存危機の回避」です。「痛み」は脳内の様々な領域に作用し各機能に優先して、危機を回避しようとします。

これを支える神経系の特性が「可塑性」で、シナプスや神経結合が巧みに変化することで、神経系に「痛みの記憶」が記録されます。

慢性疼痛は単に「長く続く急性疼痛」ではなく、可塑的性変化を伴う独自の病態だそうです。

「痛い経験」を繰り返すと、身の危険を避けるように脳の神経回路が可塑的に変化するため、「痛み」は「脳」を変え「脳」は「痛み」を変えるとも言えます。

例えば、「痛み」に対して過敏になることや、偽薬による「プラセボ効果」もこの脳の働きを利用しています。

通常、脳は「下行性疼痛制御系」として、疼痛情報の中枢神経系への入り口(脊椎後角)で「痛み」の伝達を制御して、感度を調整し、多数の感覚情報を排除します。

慢性疼痛では、痛覚過敏になっており「下行性疼痛制御系」が機能しなくなっているとも言えます。

また脳の変化に伴い、「痛み」が意識や情動に割り込むため、意識の優先順位が変わると、日常生活に支障をきたす程の苦痛を生じる可能性があります。

慢性疼痛の患者さんが「毎日痛みのことを考えてしまう」のは割り込みの強さが増加しているためだそうです。

慢性疼痛の本態が脳の可塑性変化である以上、「治療のゴール」は痛みを消失させることではなく、気にならないようにすることで、日常生活の意識の最上位に割り込んでいる「痛み」の優先度を下げることにあります。

薬物療法では、慢性疼痛患者に有効とされている薬でも6人に1人程度の効果しかないようで、近年では、「抗うつ薬」が慢性疼痛にも使えるようになり、ノルアドレナリンやセロトニンを増加させることで「下行性疼痛制御系」を賦活させ、鎮痛作用を発揮させる効果が期待されています。

何故、患者さんによって「効く」「効かない」があるのか?心理的アプローチが有効な患者さんには、どんな特徴があるのか?については解明されていませんが、痛みの苦痛を視覚化する脳機能画像を用いることで、慢性疼痛の客観的な生物学的指標として有力視されていて、将来、蓄積した画像をビックデータ化してAIで画像診断し、個々の痛み背景の分類や類型の評価が可能になれば、慢性疼痛の治療にも最先端技術による個別化医療の考え方が応用できるようになるかもしれないということです。


本日は、少し難しい内容となりましたが、「痛み」について加藤総夫先生の大変、有意義なお話をさせて頂きました。