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フレイル予防への取り組みについて(前編)

2019.06.03

未指定

皆様こんにちは。

本日は各地で「フレイル」の啓発活動を行っている東京大学 高齢社会総合研究機構 飯島勝矢 教授のお話(前編)をさせて頂きます。

 

「フレイル」とは、日本老年医学会が平成26年に「Frailty(虚弱、衰弱)」の日本語訳として提唱したものです。

各地をわが国では平均寿命と健康寿命とでは、男性で8年以上、女性では12年以上も差があるため、健康寿命を延ばすことが課題とされていています。

わが国での65歳以上の「フレイル」有症率は11.5%、予備群は32.8%というデータも出ていて、高齢者が体力の衰えで「要介護(身体機能障害)」になる手前の状態、つまり「フレイル(虚弱)」の段階での予防や対策が特に重要であるとの認識から、「一億総活躍国民会議」では「フレイル」対策が閣議決定に盛り込まれ、国家プロジェクトとなっております。

フレイルの最大のリスクである筋肉の衰え、つまり「サルコペニア(筋肉減少症)」は要介護の入り口で、その主な原因は動かないことですが、講習会では「運動をしないと筋力が衰えます」ではなく、「高齢期の2週間の寝たきりは7年分の筋肉の喪失に相当します」というように具体的な数字で、リアリティーを持たせるように、具体的な状況をイメージできるように伝えることが重要なのだそうです。

「健康と要介護の中間」段階である「フレイル」は、心身の機能を回復させることができる状態ですので、早期発見と適切な対策が大切になりますが、あくまで「回復」は「本人次第」だそうです。

また、定年退職後、自宅に閉じこもることで「社会的フレイル」を引き起こし、「心理的・認知的フレイル」、「身体的フレイル」に繋がるため、多面的に関わり合っています(図1)。

各自治体と協働し、豊島区では、最新の運動機能測定機器を備えた「東池袋フレイル対策センター」が開設されたり、「大規模高齢者長期縦断追跡コホート研究(柏スタディ)」で蓄積されたフレイルの根拠を元に、板橋区では、地域の元気なシニアを対象に「フレイル」の解説の仕方や使用する測定機器の操作方法などの知識を備えたボランティアである「フレイルサポーター」の養成講座を実施し、フレイルの危険度チェックなどを行うイベントなどを実施したり、栄養・運動・社会参加の包括的なフレイルチェックが行われています。

「フレイル予防を通じて健康寿命の街づくり」をテーマに市民主体のフレイル予防活動を全国展開しながら、全国のフレイルチェックのデータを東京大学で一元化し、ビッグデータを生かすシステムの構築に取り組んでいます。

大規模調査の結果から作成したフレイルの簡易テストの一つが、11項目の質問による「イレブンチェック」という

ものです。

回答欄の左側に該当する場合、青信号シール、右側に該当する場合、赤シールを貼り、半年ごとに自己採点し、青信号になるように、赤シールを減らすことを目指すというもので、全国統計では、赤が3つがピーク。

赤が5つ以上で、1つ増えるごとにフレイルリスクが2倍ずつ増えてゆくそうです(図2)。

もう一つの簡易テストが「指輪っかテスト」というもので、両手の親指と人差し指で輪を作りふくらはぎを囲み、「隙間ができる」場合、要注意で、総死亡リスクは「囲めない」群の3.2倍になるそうで、全体の1割程度に相当するようです。

「フレイル」の最大のリスクである筋肉の衰え、つまり「サルコペニア(筋肉減少症)」は要介護の入り口で、その主な原因は動かないことです。

そこで、講習会では「運動をしないと筋力が衰えます」という言い回しではなく、「高齢期の2週間の寝たきりは7年分の筋肉の喪失に相当します」というように、エビデンスの裏付けに基づいて、聞き手が関心を持ち、行動に結びつくようにような伝え方に工夫をこらし、具体的な数字で、リアリティーを持たせ、状況をイメージできるようにすることが重要なのだそうです。

また、従来の栄養失調と異なり、3食取っているにもかかわらず、「体がだるい」「風邪を引きやすい」などの症状が見られる「新型栄養失調」は、70歳以上の6人に1人が該当するとされていて、「タンパク質の絶対量の不足」が原因とされています。

「タンパク質」の1日の摂取量は体重1kgあたり1gが推奨されているようですが、筋力の維持やアップを目標とするなら、1.2~1.5gは必要とされるので、体重60kgであれば70~90kgが妥当な摂取量だそうです。

しかし、200gのステーキには35~40g程度の「タンパク質」しか含有されておらず、必要量を満たすためには、2枚食べなくてはならない計算になります。

さらに、食べた肉の「タンパク質」のすべてが筋肉になる訳ではなく、特に高齢者の場合、代謝が低下しているため、より一層の肉の摂取が大事となるこということになり、このことが意識され、行動に移しやすくなるため、食事についても聞き手に関心を持たせるような伝え方の工夫が重要になるようです。

次に、約5万人の身体活動・文化活動・地域活動の実施とフレイルリスクとの関係を調べた最近の大規模調査のデータを図3に示しました。

「3つともすべて実施」群を1とすると、「どれもしていない」群のフレイルリスクは16倍以上というのは納得できる結果ですが、「運動習慣あり・他の活動なし」群のフレイルリスクは、真逆である「運動習慣なし・他の活動あり」群の約3倍だったというのは予想外の結果です。

つまり、「運動習慣なし・他の活動あり」群とは、散歩もしない運動嫌いであるが、カルチャースクールに通ったり、ボランティア活動するタイプで、運動習慣がなくても、文化活動と地域活動の両方を行えば、フレイルの予防につながるということを示しています。

文化活動と地域活動は、「人とのつながり」が共通点で、社会的フレイルの予防においては、皆でワイワイ楽しく活動することが、推奨されています。

従来の介護予防は、どの人にも一律の対策が取られていましたが、人によってできるできないがあるので、その人が好きなことをやることが長続きの秘訣となります。

例えば、カラオケ好きの人の場合、まず、「行く頻度」「誰と行くのか」「歌う曲数」を聞き取り、現状が月1回であれば週1回へ、週1回であれば週2回へと頻度を増やし、いつも2人であれば4~5人のグループで行き、散歩の代わりに消費カロリーを増やす意味で、5分のウォーキングの消費カロリーに相当するように、消費カロリー15kcal程度の曲を6曲程度歌うように伝えるそうです。

そのカラオケ帰りには、ファミレスでハンバーグ定食を食べながら、会話をすれば運動に固執しなくても良いということなります。



今回は飯島先生の大変興味あるお話(前編)をさせて頂きましたが、後編では、歯科医師にも関わるオーラルフレイルについても触れたいと思います。






フレイル予防への取り組みについて(前編)
フレイル予防への取り組みについて(前編)
フレイル予防への取り組みについて(前編)