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慢性歯周炎の急性憎悪の時期と気象の変化の関連性について
2018.05.11
歯科今回は岡山大学大学院医歯薬総合研究科 予防歯科分野 森田学先生、竹内倫子先生による歯周炎の急性憎悪の時期と気象の変化の関連性についての調査研究のお話をします。
人間を取り巻く様々な環境が生体に影響を及ぼすと言われており、1950年代、欧州で初めて「生気象学」という学問が体系付けられ、わが国では1962年「生気象学会」という学会が発足したそうです。
現在、気管支喘息、頭痛、関節痛、心筋梗塞、脳梗塞、うつ病、リウマチ、顎関節症などの持病と気象の変化、特に気圧、気温との関連性が徐々に解明されていているようです。
例えば気管支喘息の場合、春や秋の季節の変わり目、特に前日との気温差が±5℃以上で発作が起こりやすかったり、梅雨の時期、移動性高気圧や台風が近づくと、症状が悪化しやすいということで、これらの情報を基に、喘息患者さんの予防対策として有用な「喘息天気予報」を提供するウェブサイトもあるそうです。
歯科領域では、岡山大学大学院医歯薬総合研究科 予防歯科分野で歯周炎の急性憎悪の時期と気象の変化の関連性について調査研究を行いました。
調査対象は2011年11月から2013年11月までの2年間に岡山大学病院 予防歯科を受診した延べ2万人の慢性歯周炎患者さんの中、原因が特定できなかった153人(男性40人、女性113人 平均年齢68.7歳)です。
結果は以下の通りで、
・気圧低下の毎時変化が大きい日の2日後
・気温上昇の毎時変化が大きい日の1日後
・最大風速が大きい日の3日後
慢性歯周炎の急性憎悪には、気圧、気温、風速の3つの因子が深く関わっているようです。
つまり、短期間で気圧が急激に低下する台風や爆弾低気圧などが通過した後、急激に温度が上昇し真夏日になった日の後に慢性歯周炎の急性憎悪する可能性があるということになります。
時期的には、春や秋などの季節の変わり目に相当していて、この気象状況は先程のいくつかの持病とも共通しているようです。このメカニズムはまだ解明されてないそうですが、気象の身体への影響として以下のことが報告されているということです。
・気圧や気温の変化は、交感神経を刺激して抹消血管の血流障害を起こし痛みや腫れなどの炎症を引き
起こす。
・気圧の変化は、ホルモン環境に影響を与えるとされていて特にアドレナリンは歯周炎関連細菌の増殖に関わる。
・気温上昇とともに、IL-6(インターロイキンというサイトカイン)の分泌が促進され痛みや腫れなどの炎症を引き起こす。
ちなみにサイトカインとは、免疫グロブリン以外の細胞が分泌する生理活性物質です。
タンパク質または糖タンパク質でできていて、その中のインターロイキンはリンパ球自身が作るリンパ球に作用
する液性因子で6はBリンパ球の分化と増殖に関わっています。
過去に同研究室で行った培養実験、病原細菌が炎症性細胞を誘引し、サイトカインなどを誘導して炎症性反応が起きるまでの時間が7~72時間であったという結果と、今回の調査研究から、慢性歯周炎の症状が悪化するまでの時間が同程度の1~3日であったというという結果を見比べると、培養実験と同様の状態が起こっている可能性が考えられるようです。
40歳以上の日本人の約8割が罹患している歯周病は、歯の喪失原因の約4割を占めるため、歯の保存という観点からしますと、慢性歯周炎の急性憎悪を予測することは、歯の保存という観点から、とても重要だということが言えます。
将来的に「喘息天気予報」のような天候による発症予測が可能になればと、今後は、気圧低下や気温上昇がどの程度起こると慢性歯周炎が悪化するのかという研究を行ってゆくそうです。
今回は成人の矯正治療にも関わるであろう慢性歯周炎と気圧や気温の変化の関連性についての大変興味深いお話で、将来、「歯周炎天気予報」なるものができることを期待したいと思います。
【監修者】
矢澤 貴(やざわ たかし)
【略歴】
東京都渋谷区生まれ 成城中学・高等学校(東京都新宿区)卒業
1989年 3月 日本歯科大学 生命歯学部 卒業
1989年 6月 同大学 臨床研修医 着任
1990年 3月 同大学 臨床研修医 修了
1991年 9月 磯貝矯正歯科医院(埼玉県八潮市)勤務
2016年 1月 藤城矯正歯科(東京都世田谷区)勤務
2023年 4月 日本歯科大学 生命歯学部附属病院 矯正診療科 臨床講師 着任
【在籍・所属】
日本歯科大学 生命歯学部 附属病院 矯正診療科
日本矯正歯科学会 認定医
東京矯正歯科学会
甲北信越矯正歯科学会
米国矯正歯科学会
日本顎変形症学会