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口腔内悪玉菌の除菌の取り組みについて

2018.08.22

歯科

皆様こんにちは。

「人生100年時代」と言われる昨今、予防医学の重要性が高まっています。

歯科では口腔内の悪玉菌を除菌し、口腔内細菌叢を健全化することで全身疾患の発症を予防するという取り組みが行われている鶴見大学歯学部 探索歯学講座 花田信弘教授による歯科の役割と可能性についてお話をします。

 

口腔内には700種類以上の細菌が存在する中、歯の表面でバイオフィルム(菌膜:微生物による構造体)を形成しやすい菌が悪玉菌となり、長年の研究の中で、種類が限られていることが分かってきたそうです。

う蝕の原因となるミュータンス菌、歯周病の発症に最も関連が深いとされるレッドコンプレックス(ポルフィロモナス・ギンジバリス菌、トレポネーマ・デンティコーラ菌、タンネレラ・フォーサイシア菌)などは、歯肉の傷から血液中に侵入し菌血症を生じ、体内に様々な部位や臓器で異所性感染を起こすそうです。

また近年、疫学研究から特定の菌と全身疾患との関係が明らかとなり、タンパク質に含まれるアルギニンをシトルリンに変える酵素を持つポルフィロモナス・ジンジバリス菌は毒性が強く、その作用によって変異したタンパク質を体が異物とみなし間接リウマチや潰瘍性大腸炎などの自己免疫疾患を発症するとされています。

また、ポルフィロモナス・ジンジバリス菌が菌血症により全身へ散らばった場合、血管内皮細胞に付着すると炎症が惹起され、最終的にはアテローム性プラークを形成、動脈硬化や虚血性心疾患を引き起こす他、膵臓がん、糖尿病、脳血管障害、認知症、高血圧症、肺炎、早産などの発症要因とも考えられています。

このように口腔細菌による持病リスクが解明されるにつれ、持病予防の観点から悪玉菌を除去しながら、有用な菌をできるだけ多く残し、口腔細菌の健全化を図ることが重要だと考えるようになり、以下のような除菌法を組み合わせるようです。

1.機械的な清掃による物理的除去

2.ケミカルコントロールによる化学的除去

3.プロバイオティクスによる生物学的除去

4.細菌検査を活用した免疫学的除去

歯の表面にバイオフィルムを形成しやすいミュータンス菌や歯周病菌などの悪玉菌を除去するため、鶴見大学歯学部で開発された「3DS(デンタルドラッグデリバリー・システム)システム」という歯の表面に限定した除菌法を同大学歯学部附属病院では積極的に導入しているそうです。

除菌希望者には口腔細菌を調べるため唾液検査を行った上で、スケーリングなどの機械的清掃により歯垢や歯石を除去後、クロルヘキシジンや次亜塩素酸電解水などの殺菌成分を含んだ薬剤を使って除菌します。

700種類もの口腔細菌の中から、唾液中や口腔粘膜上で増殖する有用な菌を生かし、歯の表面に常在するミュータンス菌やポルフィロモナス・ジンジバリス菌などの悪玉菌を集中的に除菌することが可能となった3DS除菌法では、1日1回、5~10分、薬剤を注入した患者さんの歯型に合わせた専用のマウスピース(図)を装着することで、その大半は約6週間で除菌が完了するようですが、子供の頃から感染している場合、菌の抗体が作れず、除菌が困難であるため、1日2回の薬剤塗布する場合もあります。

DS除菌法は口腔内の健康に留まらず、全身疾患の発症の予防、遅延、重篤化の防止が最終目標で、除菌完了後、歯科治療により「よく噛める」状態にした上で、管理栄養士と連携し、栄養指導を行い、全身の健康状態を向上させることにも取り組んでいるそうです。


予防医学が重要だと言われている今日、口腔細菌叢をコントロールして全身の健康をサポートできることが可能になったということは、歯科の役割が非常に大きいということを意味しています。

 

本日は口腔内の悪玉菌の除菌を行っている鶴見大学歯学部探索歯学講座 花田信弘先生の大変、興味深いお話をさせて頂きました。

 

 

 


口腔内悪玉菌の除菌の取り組みについて